先日の入院でベッドの上で小生が体験し、胸の奥深くまで沁み入った「ある気づき」について、改めてお話し致します。(以前に少しお話ししましたが、今回はもう少し掘り下げます。)

一杯の重ゆに涙が出そうになった日
手術に伴い、丸2日間の厳しい食事制限(絶食)を経て、お昼にようやくお食事が運ばれてまいりました。
【昼食】 ほとんど固形物なしの流動食。味? 献立リストの文字を見て初めて「ああ、これは〇〇のスープなのか」と知るような代物です(笑)。
【夕食】 少しだけ固形物らしきものが登場。味から「おお、これは〇〇だな」と分かるようになり、一人で密かに歓喜いたしました。
質素極まりないメニューです。しかし、この温かいスープや重ゆを一口口に含んだ瞬間、五臓六腑にじわーっと染み渡り、自然と胸の奥から熱い思いがこみ上げてまいりました。
「こんな手間暇かけて食事を作ってくださった栄養士さん、調理場の方々に感謝!」
「重い足取りで運んでくださり、『食べられましたか?』と優しくフォローまでしてくれる看護師さんに感謝!」
「当たり前のようにおまんま(ごはん)が食べられる、この平和な日本に感謝!」
「そして何より、こうしてごはんを美味しく受け入れられる自分の身体と健康に感謝!」
理屈ではなく、ただただ湧き上がる「ありがたい」という感情。
そのとき、小生の頭の中にすーっと浮かび上がってきたのが、仏教の根幹である「生老病死(しょうろうびょうし)」という言葉でした。
思わず唸る「生老病死」の本当の意味
皆さん、「生老病死」と聞くと、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
「生きること、老いること、病気になること、死ぬこと」という、人間が避けることのできない『4つの大きな苦しみ(四苦)』のことでしょう? と思われるかもしれません。
しかし、ここで一つ疑問が湧きませんか?
「なぜ『生きること(生)』までが、苦しみに入っているのか?」と。
仏教でいう「苦」の本来の意味は、悲しいとか嫌だということではなく、「自分の思い通りにならないこと」を指すそうです。
つまり「生老病死」とは、「人間の命とは、生まれることも、老いることも、病気になることも、死ぬことも、最初から何一つ自分の思い通りにはコントロールできないのがありのままの姿(無常)である」という、冷厳な、しかし温かい真理の宣言なのです。
私たちは普段、「自分の力で生きている」「自分の身体は思い通りになって当たり前だ」と錯覚して生きています。
だからこそ、病気になったり老いたりすると「なぜ自分だけがこんな目に……」と、それを『特別な不幸』として排除しようとし、苦しみます。
しかし、病気という「思い通りにならない現実」を突きつけられたとき、人は初めてハッと気づくのです。
「今まで当たり前に動いていたお腹も、当たり前に食べられていたごはんも、自分の力だけではなく、無数の縁(お陰様)によって『生かされていた』のだ」と。
病気や死は、決して人生を破壊する「悪」ではありません。
日常のありがたさを忘れかけた私たちに、「いま、生きていることの奇跡」をくっきりと浮き上がらせて教えてくれる『命の師』だったのです。
「有難い(ありがたい)」とは、文字通り「有ることが難(むずか)しい」、つまり「めったにない奇跡」という意味らしいです。
病室で食べたあの味のしないスープは、まさに小生にとって「有難い命の味わい」そのものでした。
頭の知識が「腹」に落ちた瞬間
恥ずかしながら、小生、数年前の3年間、agoraの「禅の智慧講座」にて、塩山恵林寺の古川周賢老大師様から禅の教えを直接学ばせていただく機会がございました。
当時は「なるほど、無常とはそういうことか」「生老病死とは深い教えだな」と、頭(知識)では深く納得していたつもりでした。
しかし、今回病院のベッドの上で、2日ぶりの重ゆをすすりながら、
「ああ……! 古川老大師様がおっしゃっていたのは、このことだったのか!!」
と、体の底から衝撃を受けました。
頭で覚えた100の理論よりも、病室で体験した一杯の重ゆ。
何年もかかって、ようやく知識が「腹(身体)」に落ちた感覚がいたしました。体験に勝る学びなし、であります。
最後に
この「生きていること」「生かされていること」への深い感謝を心に刻むため、真っ先に塩山の恵林寺さまへ参拝(修行)に参りたいと思っております。(8月29日((土))予定)
皆様も、今日召し上がる一杯のごはん、当たり前に動いてくれているご自身の身体に、ほんの少し「ありがたいなぁ」と目を向けてみませんか?
それだけで、いつもの日常がパッと輝き始めるかもしれません。
さて、いつ出家しようかな?
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