先日、歴史小説家・夢酔藤山先生の講演会、その第2回に参加させていただきました。

会場となった「しろうたカフェ」は、始まる前から参加者の静かな期待感が感じられましたが、講演が始まると、皆が先生の言葉に耳を傾け、深い集中に包まれました。

今回のメインテーマは、「武田家滅亡と小山田信茂」。 武田家最期の局面において、長きにわたり「裏切り者」として語られてきた、小山田信茂公に関する内容です。

夢酔藤山先生が語り始められたのは、私たちが慣れ親しんできた通説とは異なる、注目すべき見解でした。

「小山田信茂公は、武田勝頼公を裏切ったわけではないのではないか」 「そもそも、笹子峠を封鎖したという事実は確認できるのか」

そのお話に、会場は静かに聞き入っていました。

通説を鵜呑みにするのではなく、史料や背景を丹念に読み解くことの重要性を感じさせる、深く考えさせられる講演でした。

■ なぜ「裏切り者」のイメージが定着したのか
では、なぜ小山田信茂は「裏切り者」として、後世に語り継がれてきてしまったのでしょうか。 夢酔藤山先生が指摘されたのは、江戸時代に成立した『甲陽軍鑑』の影響です。

この書物によって、「小山田信茂裏切り説」や「武田滅亡の責任は彼にある」といった見方が広まった可能性は否めません。また、後世のドラマや小説も、そうしたイメージの形成に少なからず影響を与えてきたことでしょう。

しかし、事実はどうだったのでしょうか。 仮に、小山田信茂が結果として勝頼公から離れたことを指すのであれば、そうかもしれません。しかし、夢酔藤山先生が疑問を呈するのは、武田家滅亡の責任を、彼一人に過度に負わせようとする見方に対してです。

武田家が崩壊していく過程で、勝頼公のもとを去ったのは彼だけではありませんでした。 信玄公の娘婿であった木曽義昌は、早くから織田方に通じていました。同じく信玄公の娘婿であり、一門衆の重鎮であった穴山梅雪(信君)も、徳川方に内通しています。 一族譜代の重臣たちが、それぞれの事情や判断で勝頼公から離れていったのです。

そうした全体の流れの中で、小山田信茂の行動だけを特出して「裏切り」と断じる声があるならば、そうした背景も一度、冷静に考慮した上で、各自が判断すべきではないか、と先生は問いかけます。

かつて、歴史ファンの間で「真田(昌幸)の離反は、生き残るための巧みな戦略だ」と評される一方で、「小山田信茂の行動は汚い」といった比較がなされることもあったようです。

■ 武田勝頼公という人物像
そして、もう一方の当事者である武田勝頼公。 近年も、NHKの番組などで「悲劇の名将」「優れた武将であった」と、その個人的能力を評価する見方で紹介されることがあります。

確かに、一個人の武将としての力量は高かったのかもしれません。 しかし、夢酔藤山先生は、当時の甲州という独特な土地柄において、勝頼公は「異邦人」として見られる側面があったのではないか、という見解を示されました。

勝頼公の出自を考えれば、その意味が理解できるかもしれません。 彼は信玄公の四男ですが、母は信玄公が攻め滅ぼした諏訪家の姫、諏訪御料人です。勝頼公自身も、武田宗家を継ぐ以前は諏訪家の名跡を継ぎ「諏訪勝頼」を名乗っていました。 甲斐の国人たち、特に譜代の家臣団の一部から見れば、勝頼公は純粋な「甲州の主」というより、諏訪家の血を引く存在として、どこか距離を感じていた可能性も考えられます。

武田家を背負った時点で、勝頼公は非常に困難な立場に置かれていたのかもしれません。 夢酔藤山先生は、武田家の重要な分岐点として、嫡男・義信公の事件(廃嫡)と、信玄公の弟であった典厩(武田信繁)公の討ち死(第四次川中島)を挙げられました。

もし、これらの出来事がなければ。 例えば、勝頼公を一総大将としてゆかりの地である諏訪に置き、弟の仁科盛信公と連携させていれば、南信州の統治もより安定し、強固な防衛線を築けた可能性も考えられます。 そうなれば、木曽義昌が離反したとしても、諏訪が要となり、あの急速な崩壊は避けられたかもしれない……。

勝頼公という「個」の力は、そうした形で活かされるのが最適解だったのかもしれない、というお話でした。

■ 歴史の多面性を知る
歴史は、結果から語られがちです。 しかし、その結果に至る過程で、誰か一人に分かりやすい責任を負わせてしまうのは、少し一面的な見方かもしれません。

夢酔藤山先生の講演は、私たちが常識として受け入れてきた通説を改めて見直し、物事を多角的に考えるきっかけを与えてくれるものでした。

講演は終わりましたが、この深い議論の続きは、また「しろうたカフェ」で参加者の皆さんと語り合っていきたいと思います。

非常に有意義な時間でした。

  

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