【参加メンバー自己紹介(表向きの顔)】

司会(教授) 「大学で哲学を講じております。本日は学問的見地から、森信三先生の深遠なる教えについて進行を務めさせていただきます。」
ギャル(リナ) 「リナだよー!高1。趣味はスタバとティックトック? 親がうるさいからテキトーに来ただけだし。よろピクミン!」 (内面:両親は医者のインテリ家庭。期待への反発からギャルを装うが、実は医学部志望)
チンピラ(ケンジ) 「あァ? ケンジだ。職業は…フリーランスだよ。説教くさい話なら帰るからな。ジロジロ見てんじゃねぇ。」 (内面:18歳。複雑な家庭環境で虐待を受け非行へ。実は心優しく、恩師との出会いで更生を望んでいる)
超エリート官僚(エリート) 「某省庁に勤務しております。国家のグランドデザインを描く多忙な身ですが、統治者の教養として参加しました。非効率な議論は好みません。」 (内面:26歳首席卒。完璧主義で他人を見下すが、孤独を抱えている)
【テーマ:森信三先生「人生再建の三大原理」】
昭和の国民的教育者・森信三先生が提唱した、人生を立て直すための具体的な実践項目。
時を守り:約束や時間を守ることは、相手の「命」を尊重すること。
場を清め:整理整頓・清掃は単なる作業ではなく、荒んだ「心」を清める行為。
礼を正す:挨拶や返事は、相手への敬意と感謝を示す「利他」の心の表れ。
会話劇:瓦礫の中から咲く花
場所:大学の古びたゼミ室。夕暮れの光が差し込んでいる。
司会(教授): ようこそお越しくださいました。今、ご説明した「人生再建の三大原理」。一見、小学生でも知っているような道徳に見えますが、実は人生のどん底から這い上がるための最強の哲学なのです。
エリート: 「人生再建」とは大げさな。私は国家の中枢で働く身です。再建が必要なのは、ここにいる社会の底辺の方々だけでしょう。時を守る、掃除をする、挨拶をする……これらは社会人としての最低限のスキル、あるいは処世術に過ぎません。
チンピラ(ケンジ): けッ、鼻につく野郎だ。俺はケンジ。親にも世間にも見放されたクズだ。今日は、ある人に「行ってみろ」って言われて仕方なく来ただけだ。面白くなかったらすぐ帰る。
ギャル(リナ): リナでーす。てか、ここ空気が重いんですけど。マジ帰っていい? 三大原理とかウケる。縛られるのムリだし。
教授: ふふ、まあそう仰らずに。まずは第一の原理、「時を守り」から深掘りしましょう。これは単に遅刻をしないということではありません。「相手の命を敬う」という深い意味があるのです。
エリート: 効率性の追求ですね。時間は資源(リソース)だ。相手の時間を奪うことは、経済的損失を生む。当然のロジックです。
教授: エリートさん、本当にそれだけでしょうか? 森先生はこう仰っています。「時間を守るとは、相手の尊厳を守ることだ」と。待たせることは、相手の二度と戻らない命の一部を奪う罪なのです。
リナ: ……尊厳? ねえ、ウチのパパとママさ、私の10歳の誕生日、すっぽかしたんだよね。フレンチ予約してたのに。急患が入ったとかで。一人でケーキ食べてさ……あの時、私は「自分はどうでもいい存在なんだ」って思った。 でもさ、今医学部目指してこっそり勉強し直してて気づいたの。あの時、パパたちは誰かの「命」を守るために、私の時間を犠牲にしなきゃいけなかったんだって。時間を守るって、命の選択なんだよね……。
教授: リナさん、その傷ついた記憶が、今はご両親への理解に変わりつつあるのですね。深い洞察です。
ケンジ: (貧乏ゆすりを止める) 命を、奪う……か。 俺の義理の親父は、俺を殴る前、必ず何時間も正座させて説教した。「お前のためだ」と言いながら、俺の時間を、心を、じわじわ殺していったんだ。約束なんて一度も守られたことがねぇ。 「日曜日にキャッチボールしよう」……その言葉を信じて、一日中庭で待ってた俺は、ただの馬鹿だったのか?
教授: いいえ、馬鹿ではありません。あなたは純粋だったのです。だからこそ、裏切られた痛みが深い。 そこで第二の原理、「場を清め」があなたを救います。これは整理整頓、掃除のことです。
エリート: 掃除? 馬鹿馬鹿しい。それは清掃業者の仕事だ。私の仕事は思考することであり、手を汚すことではない。環境整備にコストをかけるのは無駄だ。
ケンジ: あんた、何でも金で解決かよ。 ……俺の部屋、ゴミ溜めなんだわ。コンビニの弁当の空き箱、吸い殻、酒の缶。足の踏み場もねぇ。 なんでかわかるか? 俺自身がゴミだからだよ。「どうせ俺なんて」って思うたびに、部屋を汚したくなる。汚い部屋にいると、「ああ、やっぱり俺はクズだ」って安心するんだ。 掃除なんてしたら……自分が惨めでたまらなくなる。
教授: ケンジ君、それは逆です。心が荒んでいるから部屋が荒れるのではありません。「荒れた部屋が、君の心を荒ませ続けている」のです。 森先生は仰いました。「下座行(げざぎょう)」と。人が嫌がるトイレ掃除やゴミ拾いをすることで、自分の傲慢な心を洗い流すのです。 足元のゴミを一つ拾うことは、自分の心のほころびを一つ縫い合わせることと同じなのですよ。
リナ: わかる気がする……。リナ、親への反抗で派手なメイクして、部屋も服だらけにしてるけど。 本当はね、クローゼットの奥の段ボール一箱分だけ、めっちゃ綺麗にしてるの。中身は……医学部の赤本と、小さい頃パパがくれた聴診器のおもちゃ。 そこだけが、私の「聖域」なの。そこを見ると、素直な自分に戻れる気がして。「場を清める」って、自分が「帰る場所」を作ることなんじゃないかな。
教授: 素晴らしい感性です。「場」は、その人の心を映す鏡。リナさんのその箱の中には、未来への希望が整頓されているのですね。 そして最後、第三の原理。「礼を正す」。挨拶、返事、礼儀。
エリート: 処世術ですね。上司に取り入り、部下を統率するためのツールだ。私は完璧にこなしていますよ。心の中で相手をどう見下していようと、頭を下げる角度さえ正しければ社会は回る。それが大人の作法でしょう。
ケンジ: (ダンッ、と机を叩く) てめぇ、さっきから聞いてりゃ……! 心がねぇ挨拶なんて、クソだ! 俺に「ここに行ってみろ」って言ったのはな、俺の更生を支援してくれてる高校の先生だ。まだ若い女の先生だよ。 俺が警察に補導された時、周りの大人はみんな「またあいつか」って目で見た。でも、あいつだけは違った。警察署の入り口で、手錠かけられた俺に向かって、直角に頭を下げたんだ。 「待っています。信じています」って、目で訴えながら。 あいつの「礼」は、俺みたいなクズを、一人の人間として扱ってくれた証明なんだよ!
エリート: ……犯罪者に頭を下げるなど、教師としての権威失墜だ。理解に苦しむ。
ケンジ: うるせぇ! 俺は、あいつに挨拶を返したいんだ。「おはよう」って言われたら、ちゃんと目を見て「おはようございます」って言いてぇんだよ! でも、喉が詰まって言えねぇ……長年、人に噛みつくことしかしてこなかったから。 「礼を正す」ってのは、あんたが言うようなツールじゃねぇ。相手への「感謝」だろうが! 俺は……俺は人間になりてぇんだよ!
リナ: (涙ぐみながら)ケンジくん……あんた、もう十分人間だよ。すごい優しいじゃん。 その先生、絶対ケンジくんの気持ちわかってるよ。 ……私も、パパとママに「ありがとう」って言えてない。お金出してもらって塾行って、当たり前だと思ってた。 「礼を正す」って、エリートさんが言うみたいな「鎧」を着ることじゃない。鎧を脱いで、素っ裸の心で相手に向き合うことなんだね。
教授: その通りです。「時を守り」相手の命を尊び、「場を清め」己の魂を磨き、「礼を正し」て利他の心で人と繋がる。 エリートさん、あなたはずっと「正しさ」や「効率」という武器で、孤独と戦ってきたのではありませんか?
エリート: (ハッとして言葉を失う) 孤独……? 私が? ……馬鹿な。私は選ばれた人間だ。すべてを持っている。 ……しかし、なぜだ。彼らの話を聞いていると、胸がざわつく。 私の完璧に整頓されたデスクには、リナさんのような「希望の箱」はない。私の正確無比なスケジュール帳には、ケンジ君が先生を想うような「熱」がない。 私の「礼儀」は、誰も寄せ付けないための壁だったのかもしれない……。 私は……誰かに、心から頭を下げたことがあっただろうか。
教授: 気づくことが、再建の始まりです。森先生は言います。「人間は一生のうち、逢うべき人には必ず逢える。しかも、一瞬早すぎず、一瞬遅すぎない時に」と。 今日、この全く異なる4人がここで出会ったこともまた、必然なのです。
ケンジ: ……一瞬遅すぎない、か。 おい、エリート。あんた、顔色悪ぃぞ。能面みたいだった顔が、今は少し人間らしく見えるぜ。 俺、今日帰ったら……空き缶の一つでも捨ててみるわ。全部は無理だけどよ。一つ捨てたら、先生に明日は小さい声でも挨拶できる気がするんだ。
リナ: リナも決めた。今日帰ったら、メイク落として、パパに「医学部行きたいから教えて」って頭下げる。もう反発して時間無駄にするのやめる。 エリートさんはどうする?
エリート: (長く息を吐き、少しだけ肩の力を抜く) ……今日の議論は、極めて非効率で、感情的でした。 ですが……私の知らなかった「理(ことわり)」があることは認めましょう。 帰りのエレベーターで、清掃員の方に……会釈くらいは、してみようかと思います。それが、私の「再建」の第一歩になるのなら。
教授: ええ、必ずなります。 三大原理は、平凡な日々の実践です。しかし、その徹底した実践こそが、非凡な人生を創るのです。 さあ、皆さん。新しい人生の幕開けです。それぞれの場所へ戻り、足元から光を灯しましょう。
(夕日が部屋全体を黄金色に染め、4人の顔には清々しい決意が浮かんでいた。)
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