”人間らしく生きる”ために、先ず自身に必要なことは、自身の
”心””体””頭”を鍛えることと”人”を知ることだと思っています。

”人”を知ることは、本当に素晴らしいことだと思います。

是非、皆さんにも知っていただきたく、このシリーズを設定致しました。

人を知るって素晴らしい 今回はRYUさん。

RYUさんは、小生が会社に入社して2か月間の現場実習後に
配属された設計部の直属の課長さんです。

第一印象、怖! 物凄く怖!!
背は小さく、痩せていて、色白、強面・・・。
ギョッロっと睨みつけられると、蛇に睨まれたカエル状態に。

口数少なく、いつも作業帽をかぶって黙って自席に座っている。
そう、旧陸軍の士官みたいな雰囲気です。

時にはぐっと沈み込む様に座っていて、小生や先輩らは
士官殿がいないと思って、息抜きに大声で騒いでいると、
ぬおっと起き上がってこちらを睨んでいるんですね。

折乃笠二等兵は、もう完全にカエル状態に。

また、小生、机に向かって仕事をしている(ふり?)と、何となく後ろから殺気が・・・
嫌な予感がして、恐る恐る振り向くと
「あんた、何やってんだい?」
「はっ!自分折乃笠二等兵は、今〇〇の設計変更書を作成しているところであります。」
「目的は?強度は?コストは?」
「あの、その、この・・・。」
「・・・。まあ、しっかりやってくれ。」 
「はっ!」 冷や汗、脂汗、ちょびっと失禁?
RYUさん、いつも、最後はニコっと笑って逃げ場を作ってくれるのでした。

RYUさんの設計技術は凄いものがありました。技術者の勘と言うものです。
RYUさんがだめだ!と言うのを押し切って、世の中に出したものが
市場問題を起こしてしまったことがあります。
また、瞬間的な人手不足で、恩自ら設計した前軸が物凄いパフォーマンスを
はっきしたりしました。
今でもその前軸のポリシーは生きていると思います。

何か今の技術者に足りない技術の根本原理を心と体と頭で習得して
いたのだと思います。

そんなRYUさん、飲み会が大好きで、結構豪快に飲まれ、武勇伝も多数あります。

一泊二日の部内旅行で軽井沢のペンションを貸し切ったことがありました。
夜通しのどんちゃん騒ぎで、RYUさんは気を失うほど飲まれ、
小生は2階の寝室までおんぶしてお連れしたことがありました。

それから一週間位は、蛇が借りてきた猫の様におとなしくなって、
皆でクスクス笑っていました。

毎年お正月、先輩たちとRYUさんの家にご挨拶に伺っていました。
奥様はとてもお上品で、料理が上手くて、ご主人のコントロールが上手くて・・・。
最初はみんな静に飲んでいるも、段々とどんちゃん騒ぎ・・・。

帰る頃にはもうたいへんなことに。毎年の繰り返しです。
RYUさん 「お前ら泊っていけ!」
先輩曰く 「折乃笠二等兵が泊まりたいと言っています。」 先輩たち、その合間に脱出。
二等兵 「あの、その、言ってませんけど。」
RYUさん 「何~!」
奥様 「あなた、だめよ~。」 奥様、逃げろの合図。
逃げろ~!
今となっては、ほんとに楽しい思い出です。

仕事中と飲み会のギャップが、あまりにもあり過ぎて、そこが大きな魅力で
我々部下たちは、とても人間RYUさんを慕っていたんですね。

寮生活の頃は、突然夕飯に呼んでいただき、そのまま泊まらせていただきました。
いつも感心していたのは、突然複数人おじゃましても、奥様はいやな顔をせず、
お正月の時と同じような豪華な食事(含むお酒)で歓待してくれ、ふわふわの布団に
寝かせてくれました。
それが一回や二回ではないんですよ。

今、思い出すとRYUさん、いつも、とてもお優しい目をしていたんです。
蛇にしたのは、我々だったのかもしれません。

それから、十数年後、RYUさんは静かに定年されました。

一年に一回のOB&現役の懇親会には必ず来ていたのですが、
ある時から来られなくなりました。
年賀状も途絶えてしまいました。

そして、しばらくたって、RYUさんが亡くなったことを知ったのです。
もう何ヶ月も後のことです。

いてもたってもいられず、毎年お正月に呼んでいただいたメンバーでお宅に。
奥様が昔と変わらず、静かに対応下さいました。

RYUさんは、だれにも言わずに胃癌で入院していたそうですが、
御自分の希望で家に返ってきて、だれにも迷惑を掛けない様に
全ての後始末を御自分でして、その後そっと息を引き取ったそうです。

お仏壇にお線香をあげた時、RYUさんの写真があり、
蛇ではなく、とてもとてもやさしい目でこちらを見ていました。

「折乃笠二等兵、頑張れよ!」

その後、少したって、小生は部長になりました。

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