
7月1日。小生は、まだ街が完全に目覚めきらぬ午前6時50分、JR大月駅の前に立っていました。
「青少年育成」と染め抜かれた揃いの腕章を締めながら、仲間たちと「おはようございます」と挨拶を交わします。今朝は市が主催しますキャンペーン活動の日でして、通勤や通学で駅を利用される方々にポケットティッシュをお配りし、青少年の健全な育成への関心を呼びかけるのが小生たちの役目なのです。この活動には不思議と心が惹かれます。
午前7時、小生は少しの気恥ずかしさを胸の奥にしまい込み、「おはようございます。青少年育成キャンペーンにご協力お願いします」と声を張りながら、ティッシュをそっと差し出しました。ここからが、小生のささやかで、しかし、この上なく貴重な「人間ウォッチング」の時間の始まりです。
最初に受け取ってくださったのは、制服をきちんと着こなした女子高生でした。小生の差し出すティッシュに一瞬驚いた顔をしましたが、すぐに「あ、ありがとうございます」と小さな声で応え、はにかむように受け取って足早に去っていきます。その初々しいお姿に、思わずこちらの頬も緩んでしまいました。
次に通りかかったのは、いかにも実直そうな壮年の男性です。鋭い眼差しでこちらを一瞥し、小生の手元を無視して通り過ぎるかと思いきや、ふと足を止め、無言でティッシュを一つ取っていくのです。その背中からは、「余計な言葉は交わしませんが、主旨は理解しましたよ」というような、不器用な優しさが感じられました。
「まあ、朝早くからご苦労様ですこと」。品の良いお婆様が、にこやかな笑顔で手を伸ばしてくださいました。「暑くなりますから、あなたもどうぞお気をつけて」。その温かい一言が、乾いた心に染み渡るように、じんわりと広がっていきます。そうです、私達は何かを与えるだけでなく、こうして人々から温かい心をいただくこともあるのですね。
もちろん、反応は様々です。イヤホンで耳を塞ぎ、ご自身の世界を生きるように通り過ぎていく若者。明らかに迷惑そうな顔で手を振り、避けていく会社員の方。少し離れた場所からこちらの様子を窺い、絶妙な間で視線を逸らし、遠巻きに通り過ぎていく用心深い方もいらっしゃいます。
ふと、思うのです。朝のこの時間、人々はきっとそれぞれのドラマを抱えているのでしょう。昨夜見た夢の続きをまだ引きずっているのかもしれません。今日一日の仕事や試験のことで頭がいっぱいで、心が晴れないのかもしれません。家を出る間際に、些細なことでご家族と口論になったのかもしれないのです。小生の差し出すティッシュが目に入らないほど、心に余裕がない状況だってあるはずです。そう考えますと、たとえ無視されても腹が立つことはありません。むしろ、その方の一日が少しでも穏やかでありますようにと、心の中で祈っている小生がいました。
果たして、自分が逆の立場でしたらどうでしょうか。急いでいる朝、腕章をつけた方が何かを差し出してきたら。やはり、ほんの一瞬でも足を止め、「おはようございます。御苦労様です」と、相手の立場を慮る言葉を添えて受け取りたいものです。ほんの数秒のやり取りが、その日一日のお互いの気持ちを少しだけ豊かにするかもしれないのですから。
活動時間の終わりを告げる午前7時40分。駅前の喧騒は頂点に達していました。配り終えたティッシュの袋の軽さが、心地よい達成感を運んでくれます。短い時間でしたが、この駅前の交差点で、小生は確かに「世の中の縮図」を見たように思いました。無関心、優しさ、警戒心、感謝、焦り。行き交う人々の数だけ、人生の断片がそこにはありました。
ポケットティッシュ一枚。それはささやかな啓発の道具に過ぎません。しかし、それを手渡すほんの数秒の間に、言葉にならない心の交流が生まれるのです。小生にとりまして、この活動はもはや義務ではありません。多様な人々の人生の一瞬にそっと触れさせていただく、かけがえのない時間なのです。爽やかな朝の空気の中、小生はまた来年もこの場所に立とうと、心にそっと誓ったのでした。
P.S.市役所の始まりにはまだ時間があったので、チョコザップによりました。心地よいクーラーの涼しさでしたが、さすがに汗だくだくで筋トレをやる気にはならず、マッサージ7チェアの御褒美。最高のリラックスで居眠りしてしまいました。
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朝早くからポケットティッシュ配りお疲れさまでした。
ポケットティッシュ一枚ですが、通りすがりの人々の反応に映る“人生の断面図”が、描かれていると思います。
私の場合、ポケットティッシュを配っている場所によって、反応が異なります。駅前で配っている人に遭遇するときは比較的受け取っていますが、ショッピングモールなどで配っているときは、結構ですと言って受け取らないか、遠巻きに通り過ぎています。理由は受け取った後に引き留められることがあるからです。
また、このブログを読んで配っている人の気持ちも理解することができたように思えますし、お互いの気持ちを豊かにできればいいですね。