皆さん、映画『男はつらいよ』の寅さんは御存じでしょうか?
歳の若い方も名前は聞いたことがあると思います。

映画の最初に出てくる寅さんの御挨拶です。
「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯を使い、
 姓は車、名は寅次郎、人呼んで “フーテンの寅” と発します。」

実は、わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又の近くの立石です。
家は小さな木造平屋のプレス金型製作の工場で、前に大きな
どぶ川が流れていました。

と言うことで、小生、「男はつらいよ」の寅さんから大きな影響を受けています。
なんてったって、周りがおいちゃんやおばちゃん、さくらやひろし、タコ社長みたいな
キャラクターの人たちばかりでしたから。
情の深い、あたたかい人が多かったです。

さて、寅さん映画は全48作で日本が世界に誇る名作です。
昔は必ず国際線の飛行機で上映していました。
ストーリーはいつも単純ですが、必ず美しいヒロインが出てきて、
寅さんが恋をしてふられ、また旅に出る。
周りの人たちとのふれあいが何とも言えなく、あたたかくせつない。
いつもの小気味の良いフレーズ、
「結構毛だらけ、猫灰だらけ、けつの廻りはくそだらけ!」
「たいしたもんだよ!かえるの小便、見上げたもんだよ!屋根屋のふんどし・・・。」
良いですねえ~。

ここで、今回注目したのは、28年・全48作にも及ぶ大作の中で、鉄道シーンが
とても数多いことです。

特に、寅さんの鉄道の旅は、特急や寝台車には乗らず、ローカル線の鈍行で
旅をするんですね。

また、哀愁のある駅も大きな魅力です。

何んと言っても全作品に出てくるのが、京成電車と柴又駅。
今では駅前に、寅さんと妹のさくらの像が建っています。
柴又寅さんブログ.jpg

いつもここでは、寅さんが失恋しておいちゃんやおばちゃんと喧嘩して
また旅に出ようとするところに、妹さくらが涙ながらに追ってきて引き留めるようとする、
そこへ京成電車がやってきて寅さんは作り笑顔で旅に出るというシーンです。

また、これもほとんどの映画で出てきますが、旅の出発前に上野駅地下の
薄暗い食堂でラーメンを食べるシーンがあります。
寅さんが寂しそうにラーメンを啜る姿はとても切ないです。

実は小生このシーンと全く同じことをしてしまうんです。
『これは今から40年前、学生さん(私)の夜汽車の物語です。
 学生さんは実家東京葛飾を離れて、遠く越後長岡の大学の寮にいました。
 当時、上野発新潟行の急行列車に佐渡がありました。
 冬、学生さんは東京の家に帰っていました。ある夜、生意気盛りの学生さんはお母さん
 と大喧嘩をしてしまいます。もともと浅草生まれのちゃきちゃきの江戸っ子のおかあさん
 は学生さんが心配で心配でしょうがないのですが、つい帰ってくると、きつい言葉を発し
 てしまうのです。学生さんは、お父さん、お兄さんの静止を振りきって鞄を持って家を飛
 び出してしまいました。学生さんは、立石駅から京成電車で上野駅へ。
 そして、上野駅の地下の薄暗いきたない食堂でラーメンを注文しました。学生さんは映
 画「男はつらいよ」の寅さんの大ファンで、いつも寅さんがここでラーメンをおいしそう
 に食べているのを見ていたので、さぞおいしいものと思ったのでしょう。しかし、ラーメ
 ンはとてもまずかった! そして、ちょっとしょっぱかった! 泣いていたのかもしれま
 せんね。
 本当は寅さんの妹のさくらや帝釈天の源さんのように上野駅に連れ戻しに来てほしかっ
 たのかもしれません。
 急行佐渡が上野駅を離れます。もし、急行佐渡が隣の日暮里駅に止まっていたならば、
 そこで降りて京成電車で家に戻ったかもしれません。
 車内はスキーへ行く学生たちや家族で賑やか、とても楽しそうです。学生さんはお母さんと
 の大喧嘩を後悔しています。大宮、高崎、渋川、水上、寝付けません。せまい直角椅子に
 横になります。もし、家にいたならば、今頃柔らかい布団の中なのに……。
 長い国境のトンネルを越えて越後湯沢へ。まだ眠れません。六日町、小出、越後河口、
 長岡。眠れない夜汽車の車中ほどつらいものはありません。学生さんは長岡で電車を降り
 ました。まだ暗いホームは大雪です。汽笛とともに急行佐渡は新潟に向かいました。赤い
 テールラップはすぐに見えなくなりました。それが、雪のせいなのか、学生さんの涙のせ
 いなのか。今となっては分かりません・・・』

寅さんは良く夜汽車に乗っていました。
小生、その中で忘れられないシーンがあります。
『寅さんは、裂きイカで一杯やりながら、退屈きわまる一夜をやり過ごそうとする。
 ふっと振り返ると、派手な身なりの女が涙ぐんでいるのが目にとまった。
 リリー(浅丘ルリ子)である。
 翌日、ふたりは初めて口をきき合った。
 リリーはドサ回りの歌手だという。旅暮らしという点では、自分と同じ稼業ではないか。
 たちまち意気投合したふたりは、妻子を残して漁に出る漁船を目にしながら語り合う。
 リリー「兄さんなんか、そんなことないかなあ。夜汽車に乗ってさ、外見てるだろ。
 そうすっと、何もない真っ暗な畑の中なんかにポツンと灯りがついてて、
 ああ、こういうところにも人が住んでいるんだろうなあ、そう思ったらなんだか
 急に悲しくなっちゃって、涙が出そうになる時ってないかい?」
 寅さん「ううん、こんなちっちゃな灯りが、こう、遠くへ遠ざかっていってなあ。
 あの灯りの下は茶の間かなあ。もう遅いから子供たちは寝ちまって、父ちゃんと
 母ちゃんふたりで、しけたせんべいでも食いながら、紡績工場に働きに行った娘
 のことを話しているんだよ、心配して。暗い外を見て、そんなことを考えていると、
 汽笛がボーツと聞こえてよお、何だかふっと、こう涙が出ちまうなんて、
 そんなこと、あるよなあ。わかるよ。」』
何か、切ないですね。

寅さんの鉄道の旅は、ほとんど日本全国に及びます。
その土地土地に人がいる、生活がある、会話がある、楽しことや悲しいことがある。
寅さんはいつもやさしい目でそれを観ているんですね。

皆さん、もしどこか鉄道の旅を考えているならば、是非映画『男はつらいよ』を
観てから出発されると良いかと思います。
旅が2倍も3倍も情緒豊かになると思います。

以下に参考情報をお伝えします。

網走駅  
 第11作「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」
札幌  
 第5作「男はつらいよ 望郷篇」、第15作「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」
函館本線(小樽~小沢) 
 第5作「男はつらいよ 望郷篇」
根室本線(根室~蒂内~釧路) 
 第33作「男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎」
斜里駅  
 第38作「男はつらいよ知床慕情」
函館本線(函館~長万部~蘭島~札幌) 
 第15作「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」
小樽
 第15作「男はつらいよ寅次郎相合い傘」
京極駅 
 第31作「男はつらいよ 旅と女と寅次郎」
驫木駅
 第7作「男はつらいよ奮闘篇」
栗原電鉄(石越~畑倉)

陸中花輪駅
 第35作「男はつらいよ 寅次郎恋愛塾」
越後広瀬駅 
 第7作「男はつらいよ 奮闘編」
会津高田駅
 第36作「男はつらいよ 柴又より愛を込めて」
新潟
 第31作「男はつらいよ 旅と女と寅次郎」
上田交通別所線(上田~別所温泉)
 第18作「男はつらいよ 寅次郎純情詩集」
関東鉄道常総線中妻駅
 第39作「男はつらいよ 寅次郎物語」
水郡線(水戸~袋田)・袋田駅
 第42作作「男はつらいよ ぼくの伯父さん」
沼津駅
 第7作「男はつらいよ 奮闘篇」
柴又駅
 第1作「男はつらいよ」ほか
京成関屋駅
 第14作「男はつらいよ 寅次郎子守歌」
上野駅
 第1作「男はつらいよ」ほか
東京駅
 第45作「男はつらいよ 寅次郎の青春」
江ノ島電鉄鎌倉高校前駅
 第47作「男はつらいよ 拝啓車寅次郎様」
小海線(小淵沢~小諸)
 第40作「男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日」

大井川鉄道(金谷~千頭)
 第22作「男はつらいよ 噂の寅次郎」
落合川駅
 第44作「男はつらいよ 寅次郎の告白」
日出塩駅
 第10作「男はつらいよ寅次郎夢枕」
京福電気鉄道京善駅
 第9作「男はつらいよ 柴又慕情」
京福電気鉄道東古市駅
 第9作「男はつらいよ 柴又慕情」
尾小屋鉄道金平駅
 第9作「男はつらいよ 柴又慕情」
生駒ケーブル宝山線(鳥居前~宝山寺)
 第27作「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎」
阪和線(天王寺~和歌山)
 第39作「男はつらいよ 寅次郎物語」
大和上市駅 
第39作「男はつらいよ 寅次郎物語」
備中高梁
 第8作「男はつらいよ 寅次郎恋歌」、32作「男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎」

因美線・姫新線(美作滝尾~中国勝山)
 第48作「男はつらいよ 寅次郎紅の花」
鳥取駅
 第44作「男はつらいよ 寅次郎の告白」
若桜鉄道安部駅
 第44作「男はつらいよ 寅次郎の告白」
温泉津駅
 第13作「男はつらいよ 寅次郎恋やつれ」
津和野
 第13作「男はつらいよ 寅次郎恋やつれ」
下灘駅
 第19作「男はつらいよ 寅次郎と殿様」
伊予大洲駅
 第19作「男はつらいよ 寅次郎と殿様」
小城駅
 第42作「男はつらいよ ぼくの伯父さん」
田川伊田駅
 第37作「男はつらいよ 幸福の青い鳥」
鳥栖駅
 第28作「男はつらいよ 寅次郎紙風船」
夜明駅
 第28作「男はつらいよ 寅次郎紙風船」
由布院
 第4作「新・つらいよ」
湯平駅
 第30作「男はつらいよ 花も嵐も寅次郎」
麻生釣駅 
 第21作「つらいよ 寅次郎わが道をゆく」
伊作駅跡
 第34作「男はつらいよ寅次郎真実一路」

仮に無くても近くが出てくる作品をお勧めします。

以上、寅さんの鉄道の旅のように、旅をしたくなりました。

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