『義父はためらいがちに応えて子どもたちのすぐ後ろに回り、僕に言った。
 「雨になったのう……」
 神さまは最後の最後まで、和美には意地悪のしどおしだった。

 そうですか、とうなずくと、義父は見る間に目に涙を浮かべながら、つづけた。
 「……じょうぶな子に産んでやれんで、すまんかった。」
 神さまよりも人間のほうが、ずっと優しい。

 神さまは涙を流すのだろうか。

 涙を流してしまう人間の気持ちを、神さまはほんとうにわかってくれているのだろうか。』

これは、小説”その日の前に 重松清著”の一文です。

今日、死に行く妻を静かに見送ろうとしている主人公と義父の会話です。
この8行で、この小説全358ページの全てを語っていると思いました。

とても切なくて悲しい気持ちになります。

自分に照らし合わせて考えると、小生の両親は、自身の人生を長さ、幅、深さ共
十分生ききり、約2ヶ月の入院の中で、眠る様に亡くなりました。

その入院の2ヶ月の間、最初の頃我々家族はお別れの覚悟をしなければならないと
いう深い悲しみにありましたが、段々に親に対する思い出と感謝とお別れの心の整理を
することができました。
よって、神さまにはむしろ感謝をしたい気持ちでした。

しかし、自分に小説の中の主人公と同じことが起きたら・・・。
たぶん、主人公と同じことを思ったと思います。

小生思うに、神さまの定義(認識)は各個人によりさまざまで、
その時の個人の状況、状態によっても変化すると思うのです。

神さまは、人間が創造した架空の存在で絶対的なものではないと思います。

改めて、神さまを広辞苑で調べてみると
①人間を超越した威力を持つ、かくれた存在。人知を以てはかることのできない能力を持ち、
 人類に禍福を降すと考えられる威霊。人間が畏怖し、また信仰の対象とするもの。
 万葉集15「天地あめつちの―を祈こひつつ吾あれ待たむ早来ませ君待たば苦しも」
②日本の神話に登場する人格神。
  古事記上「天地初めて発ひらけし時、高天たかまの原に成れる―の名は」
③最高の支配者。天皇。
  万葉集3「大君は―にし座ませば天雲の雷いかずちの上に廬いおらせるかも」
④神社などに奉祀される霊。
⑤人間に危害を及ぼし、怖れられているもの。
 ㋐雷。なるかみ。万葉集14「伊香保嶺ねに―な鳴りそね」
 ㋑虎・狼・蛇など。万葉集16「韓国からくにの虎とふ―を生取いけとりに」
⑥キリスト教で、宇宙を創造して歴史を司る、全知全能の絶対者。
 上帝。天帝。→三位一体

増々、わからなくなりました。

答えは出せません。
これからも更に考え続けていきたいと思います。

神さまは涙を流すのだろうか?

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