”人間らしく生きる”ために、先ず自身に必要なことは、自身の”心””体””頭”を
鍛えることと”人”を知ることだと思っています。

”人”を知ることは、本当に素晴らしいことだと思います。

今回は、北鎌倉円覚寺管長の横田南嶺老師をご紹介致します。

老師は禅宗の臨済宗の中では最も有名な高僧のお一人で、世界的にも有名です。

横田南嶺老師ご紹介 (インターネットより)
『横田南嶺(よこたなんれい/1964年~)は、和歌山県出身の僧。
 鎌倉円覚寺の管長を務める人物。筑波大学在学中に白山龍雲院の
 小池心叟老師について得度し、大学卒業と同時に京都建仁寺僧堂で
 修行生活に入る。
 1991年からは円覚寺僧堂で修行を行い、1999年に円覚寺僧堂師家、
 2010年に臨済宗円覚寺派管長となる。』

小生、円覚寺で直接講話を数回お聞きしていますし、他講座でも数回聴講し、
御本も多く読んでおります。

お話が非常に具体的であり、ユーモアに富んでいるので、お聞きしていて
す~と「心」や「頭」に入ってきます。

その中で、今回紹介するのは、数年前に円覚寺の説教会でお聞きした
今でも「心」に残っている深いお話です。

このお話の内容と老師のお姿から、”人”を知ることができます。

真冬のある日、北鎌倉駅8時着。
静けさと寒さの中、凛とした気高い雰囲気を感じる。
駅の前に円覚寺がある。
山門にて大きく拝礼し、説教会が行われる大方丈に進む。
9時開始で50分前にも関わらず、会場は多くの人が集まり始めている。
小生、老師のお姿をすぐ近くで拝見したいので一番前の席に付く。
始まるまで、持参した老師著の本や配られた小冊子を熟読する。
9時老師御入場。強いオーラ―に人間力とやさしさを感じる。
先ずは御経。美しい声と綺麗な節回し。
こんな心に沁み入るお経は今まで聞いたことがない。
9時20分、説教が始まった。
近くで見るお顔は温和で親しみ易い。
お声は少し低いトーンで和歌山弁を感じる。
ゆっくりした口調で論理的にとてもわかり易くお話をする。

『おはようございます。
先ず、皆様に感謝のお願いがあります。
一番目、生まれてきた不思議に感謝。
二番目、今まで生きてこられたことに感謝。
三番目、ここでめぐり合わせていただいたことに感謝。
四番目、東北の御霊に感謝。

さて、いつもの説教会では、楽しい話をしていますが、3月はその気になれません。
東日本大震災以来、我々鎌倉では、宗教者達が皆一堂に集まって、神道の方々も、
キリスト教も、仏教もみな一つになって祈ろうとお勤めしています。
年によって神道、仏教、キリスト教と持ち回りで、祈りの法要を勤めています。
先月、鶴岡八幡宮へ行って参りました。大勢の方にお参りいただきました。
被災地の一日も早い復興を祈ります。

さて、ここで去年実施されました第36回全国中学生人権作文コンテストの
宮城県大会で仙台法務局賞を受賞された作文を紹介します。
題名は“福島県人お断り”です。

内容は作者(当時小学三年生)が南相馬市に住んでいましたが、
原子力発電所の爆発で一夜で住めなくなり、親戚がある栃木県に
避難することになりました。
その途中に寄った店で、とても衝撃的なものを見てしまいます。
駐車場に停めてあった車に、“福島県人お断り”と書かれた
ステッカーを貼った車があったのです。
一瞬パニックになり、意味を理解した時にとても悲しい気持ちに
なったそうです。

とても胸が痛みます。我々は福島県の方々に何ができるのか?
気持ちだけで良いのか?

また、その方の祖母の知人が熊本地震の際に、支援物資を届けに行った時、
「福島の物資はいらない。」と受け取ってもらえなかったそうです。
そして、その女の子は何故同じ日本人なのにこのようなひどい言葉を
かけられなければいけないのか悩み、自分の気持ちを人に話すことが
できなくなってしまいました。

小学校5年生の時、同じ被災地である宮城県女川町へ引っ越します。
ここで地元の人のやさしさと強さを知ることになります。

最後にこう記しています。
私は将来、自分を救ってくれた人たちの様に、苦しむ人の小さな助けになりたいです、と。』

ここで、老師は大きく息を吐き、天を仰ぎます。

『人の苦しみを知るこころは仏教のこころであります。
 皆様もこの様なこころを持っていただきたいと思います。』

小生はこの中学生の想像を絶する体験とむごい言葉の暴力を受け
大きく傷ついたにも関わらず、現在、同じように苦しむ人の助けになりたいという
こころの強さに大きく感動していました。

会場の殆どの方々は、ハンカチで目をぬぐっておりました。
そして正座して若干頭を垂れ目をつぶる老師のお姿は、心の中で泣いている様でした。

小生には、その時間がお話になっていた時間よりも長く深く感じられました。

そして、横田南嶺老師を臨済宗の高僧というより、我々と同じ普通の「人」を感じたのでした。

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