本当の優しさってなんだろう。

人によって、捉え方、考え方、行動の仕方などいろいろで、
千差万別ですね。

小生は、思うのは以下です。
「相手側の立場に立って物事を考えること」 

これって、実はとても難しいんですよね。
余計な事をしたり、言ったりしてしまって、いつも失敗しています。

それでも失敗しても、相手のことを真摯に真剣に大切に思えれば、
それでよいと思っています。

今回は能書きではなくて、ほんと心あたたまるお話を紹介します。

松崎運之助さんという元夜間中学教師で、夜間中学へ通う人たちの
我々が想像すらできない様なたいへんな人生と向き合ってきた方がいます。
その方も相当な苦労をされて教師になっています。

その方が綴ったエッセイ集”こころの散歩道”の中で冒頭に出てくるお話です。

小生が要約しました。

『パンの耳の天使
 小さな町の裏通りに初老の夫婦が営む自家製パン屋があります。
 そのパン屋さん夫婦に聞いた話です。
 パン屋を開店した30数年前のことです。

 木曜日の夕方、一袋10円の「パンの耳」を買いにくる男の子がいました。
 小学三年生ぐらいで、耳の不自由な妹といつも一緒です。
 木曜日は母親の帰りが遅くなるので、「パンの耳」で空腹をしのいでいるようです。
 「お金は母親からもらっている」と言います。

 ある日の夕方、店先で兄妹が棒立ちになっていました。
 兄がポケットに何度も手をつっこんで、そしてくやしそうに帰っていきました。
 電話中だった奥さんは、〃お金を忘れたので取りに帰ったのだろう”と
 思って見ていました。
 ところが二人はなかなか戻ってきません。心配になっていつもより
 30分も長く店を開けて待っていたのですが、現れませんでした。

 つぎの木曜日、奥さんは手作りのおやつを用意して二人を待ちました。
 でも姿を見せませんでした。
 そのつぎの木曜日も、そのまたつぎの木曜日も二人は現れません。
 「引っ越ししたのかもしれない」
 夫婦はさびしい気持ちで話をしていました。

 姿を見せなくなってから5回目の木曜日。
 二人が来ました。はじけるような笑顔です。
 「クリームパンを一つください」
 大きな声で男の子がご主人に言いました。
 「えっ、パンの耳じゃないの?」
 「今日はお母さんの誕生日だから、お母さんにクリームパンを買ってあげるの。
 お金は、パンの耳をがまんして貯めたんだよ。」
 握りしめていた10円玉5枚を見せます。
 「それで来られなかったんだ。でも偉いなあ」
 ご主人の声が潤んでいます。

 「ところで前に、店先まで来て帰ったことがあっただろう。あれはどうして?」
 「ポケットの破れからお金を落としちゃった。ずっと探したけど見つけられなくって……」
 「大変だったね……」、ご主人は涙声です。

 奥さんがきれいな箱にクリームパンを入れ、リボンで結わえて男の子に渡しました。
 箱には奥さん手作りのおやつも入れてあります。
 ぴょこんとお辞儀をし、大事に箱をかかえ、妹と手をつないで店を出る男の子。
 夫婦は目頭を熱くして後ろ姿を見送っていたそうです。』

「相手側の立場に立って物事を考えること」
お母さんを思う兄妹、兄妹を思うパン屋さんの御夫婦。
素晴らしいですね。

その後どうなったか?ここからは小生の想像です。

兄妹は、お母さんに喜んで貰いたい一心で走って家に帰りました。
しばらくすると、仕事に疲れたお母さんが帰ってきました。

妹がパン屋のおばちゃんが作ってくれたきれいな箱を
お母さんに差し出しました。

お母さんはちょっと怪訝そうにその箱を開けました。
中にはクリームパン一つと手作りのおやつが入っていました。

お母さんは、しばらくクリームパンを見つめていました。
そして、涙がポロリ。

子供達の気持ちとその行動がわかったのです。
「相手側の立場に立って物事を考えること」

本当の優しさって、この様なことなのでしょうね。

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